☆海綿とは☆
海綿動物門に属する動物の総称である。
普通海綿綱に属する6種の海綿は海綿質繊維だけからなり、かたい骨片をもたないため、スポンジとして化粧用や沐浴用に用いられている。
また、海綿は水中に浮遊する食物を濾過することで捕食するため、水質汚濁の原因となる水中の微生物や有機物を除去する役割を果たしている。
このため、カスピ海では海綿を水質浄化に用いているという。
海綿は黄色い外見をしているが、これはもともと海で採れた時には、紅茶のような色なのであり、これを漂白することで美しい黄色になっているのである。
☆海綿の種類☆
石灰海綿綱(Calcarea)●
骨格の主成分は炭酸カルシウムで、総て海産の海綿動物である。
●普通海綿綱(Demospongiae)●
現生する海綿の95%この綱に属している。
骨格はかなり柔軟性のある海綿質繊維の「スポンジン」で構成されている。
スポンジンの主成分は、他の総ての動物がもつ細胞外マトリクス物質であるコラーゲンの祖先物質である。
●六放海綿綱(Hexactinellida)●
ガラス海綿ともよばれ、六放射星状のケイ酸質の骨片を主とする骨格を持つ。
深海の砂地などに生息している。
●硬骨海綿綱(Sclerospongiae)●
炭酸カルシウムの骨格の周囲をケイ酸質の骨片と海綿組織が取巻いている。
多くが化石種である。
☆海綿の用途、使用法☆
海綿(カイメン)の使用目的・使用方法は、たくさんあり、フェイシャル・化粧用・赤ちゃんのお肌の洗浄・ボディスポンジ用などに使われている。
赤ちゃんやお肌の弱い方がボディスポンジ用として使用する場合には、ナイロン不織布やウレタンはともかく、コットン(綿)や麻(リネン)、絹(シルク)、天然ヘチマ繊維、こんにゃく繊維等よりも柔らかく、比較にならない程吸水性が高いのが特徴であるため、大変優れていると言える。
そして、海綿は殺菌剤入りの洗浄剤でよく洗った後、日中の紫外線で乾燥とさらなる殺菌をすることで、何度も再使用が可能である。
☆海綿の質☆
地中海(エーゲ海)では、時折オバケのようなカイメンが採れることもあるが、ボディ洗浄用途として使っても、数ヶ月でボロボロになってしまうことが多い。
このようにアタリハズレの多いカイメンであるが、アタリである場合、巨大なタイプでボディ洗浄用途として毎日ハードに使用したとしても、数年間使える場合がある。
難点は、ちょっと削って形を整えると一回分しかとれないにもかかわらず、値段も千数百円と高すぎるきらいがある。
また、いかに外見的には穴が極端に小さく、密度も高いという海綿だとしても、中を切ってみると、ゴミがあったり、最悪の場合、中に大きな空洞があってまるで使えないという場合もある(その場合であってもフェイシャルなど他の用途には、もちろん充分使用可能)。
市販品の海綿については、マックスファクターのカイメンは資生堂よりも若干グレードや密度も低いが、数百円程、値段も安く、ほとんどの場合で二回分をハサミで切って使うことが出来るので、(それでも何度かは一回分しかとれない場合があった)私はこちらの商品を購入していたことが多い。
他にも安いメーカーが数社あったが、あまり向かないタイプのものしか扱っていなかった。
しかし、薬局にそれすら数個しか置いていないという場合も多く、現在では海洋資源が枯渇しているのか、常に海綿の数が不足しているという状態である。
場所によっては数日間もの間、品切れになっている場合も多い。
☆海綿について☆
海綿を布でこすと、バラバラになった細胞は再び寄り集まり、新しい海綿を作る。
海綿は植物ではなく、原始的な、進化しなかった動物である。
海綿の細胞は、雄細胞も雌細胞も無性細胞も両性細胞もある。
海綿は海水、淡水、冷水、温水とどこでも暮らせる。
海綿が移動するのは、海綿をカモフラージュに使ってる蟹が移動するときだけ。
白血病に使われる抗生物質のひとつは海綿から作られる。
抗腫瘍物質
沖縄産海綿や長崎県五島列島で採取した海綿から、非常に強い活性を示す「arenastatin A」や「cally statin A」が見出され、絶対立体配置を含めた全化学構造を明らかにするとともに、その全合成を達成し、構造と活性に関する知見を得ている。
また、作用機序として、「arenastatin A」はチューブリンの重合を阻害し、cally statin Aは輸送担体CRM1に結合し、核蛋白質の核外移行を阻害することを明らかにしている。
分化誘導物質
インドネシア・スラベシ島のサンゴ礁域で採取した海綿Theonella swinhoeiから、ヒト慢性骨髄性白血病(K562)細胞をマクロファージへ分化誘導する 「misakinolide A」を見出した。
また、海綿Phyllospongia chondrodesから、K562細胞を赤芽球へ分化誘導する「PHC-1」が単離された。
海綿の生物学的特徴
海綿は表面に小孔と呼ばれる数多くの孔をもち、ここから水と食物をとりこんでいる。
また、大孔とよばれる開口部が上部にあり、ここから水を吐き出している。
胃腔と呼ばれる内側の空洞部には鞭毛をそなえた襟細胞が多数あり、この鞭毛によって小孔から大孔への水の循環を引き起こしている。
生殖は無性生殖と有性生殖の双方を行う。
無性生殖として体表から芽が成長して繁殖するほか、芽球と呼ばれる芽を体外に放出して繁殖する種もある。
有性生殖も多様であり、雌雄同体と雌雄異体の双方の種がある。
多くの種では受精後、幼生になるまでは親の体内で育つ胎生であるが、卵生の種も存在する。
発生の過程において、外胚葉や内胚葉といった胚葉の形成は起こらない。
また、多細胞でありながら明瞭な器官の分化が見られない。
このため、海綿動物門および平板動物門(同様に組織の分化が見られない)は側生動物(Prazoa)として、器官系が分化したその他の動物である真正後生動物(Eumetazoa)とは 区別されている。
襟細胞が襟に囲まれた鞭毛をもつことから、単細胞生物の立襟鞭毛虫(たてえりべんもうちゅう)と海綿動物との類似性が指摘されている。
このことから、以前は海綿動物は襟鞭毛虫の群体から派生したもので、多細胞動物とは系統が異なるものではないかとも言われた。
しかしながら、海綿動物にはホメオボックス遺伝子、TGB-β遺伝子など、多細胞生物としての分化、発生に関わる遺伝子群をすでに有していることが明らかになってきている。